日本株の高配当ETFの中でも、iSMSCI高配当(1478)とNF日経高配当50(1489)は、どちらも知名度・純資産規模が大きく、長期投資家からの関心が高い銘柄です。一方で、同じ「高配当ETF」であっても、指数の設計思想や組み入れ銘柄の特徴は大きく異なります。
そこで本記事では、1478と1489の違いを、
- インデックス(指数)の設計思想
- 構成銘柄やセクター構成の傾向
- リスク・リターン特性の違い
- 投資目的別の最適な保有割合(70:30/50:50/85:15)
という切り口から整理します。そのうえで、「老後資金の柱にしたい」「インカムを厚くしたい」「代用FXの担保候補としても見ておきたい」など、読者それぞれの目的に応じて、どのような比率で組み合わせるとバランスが取りやすいかを具体的に考えていきます。
これから高配当ETFを長期保有していきたい方や、1478と1489のどちらをどれくらい持てばよいか悩んでいる方の判断材料になれば幸いです。
iSMSCI高配当[1478]とNF日経高配当50[1489]の特徴
iSMSCI高配当[1478]:クオリティ重視の防御型・高配当ETF
- 連動指数:MSCIジャパン高配当利回り指数
- 特徴
- 配当利回りだけでなく、ROE・負債比率・配当継続性などの財務指標でスクリーニング(MSCIジャパン指数の配当利回りの130%を超える利回りを持つ銘柄のみが最終的に構成銘柄)
- 「高利回りだけど業績ボロボロ」という配当落とし穴銘柄(配当トラップ)を避ける設計
- 構成銘柄は三井物産、KDDI、ホンダ、ソフトバンクなど、日本の大型・中型株中心
- 投資家にとっての意味
- 市場全体が荒れても、財務がしっかりした企業中心なのでドローダウンが相対的に小さくなりやすい
- 長期的なキャピタルゲインと配当の「両方」を狙えるコアETF
NF日経高配当50[1489]:ピュア高配当を追求する集中投資型ETF
- 連動指数:日経高配当株50指数
- 特徴
- 現在利回りの高い銘柄を中心に、50銘柄に集中投資
- 武田薬品、JT、日本製鉄、海運株、銀行株など、いわゆる「高配当株らしい銘柄」が多い
- セクター偏りが出やすく、景気敏感業種のウェイトが高まる局面も
- 投資家にとっての意味
- 分配金利回りを高めたいときに有力な選択肢
- その一方で、景気後退局面や個別銘柄要因による配当減配・株価下落の影響を受けやすい
- コアというより、サテライト(上乗せ)のインカム源として位置づけるのが無難
1478と1489を組み合わせるメリット
2本を組み合わせる最大の意味は、単体では取りにくい「安定」と「インカム」の両立を実現できる点にあります。
2本それぞれの特徴は、次のとおりです。(前章を簡潔にしたもの)
- 1478:クオリティフィルターにより、財務基盤のしっかりした高配当株が中心
- 1489:高利回りを最優先する分、セクター偏り・個別銘柄リスクを取りに行く設計
この2本を組み合わせることで、
- 「1478の防御力」+「1489の高インカム」をミックスでき、
- セクター/ファクターが完全にはかぶらず、リターンの相関が下がり、ポートフォリオ全体のブレが抑えられます。
コア(守りと成長):1478、サテライト(インカム強化):1489 という役割分担で比率を調整していきます。
投資目的別の最適保有割合の考え方
この章では、
- 長期で資産形成/リスク管理重視 … 値動きのブレを抑えつつ、配当と成長のバランスを取りたい方向け
- インカム最大化 … 多少の値動きは許容してでも、分配金収入を厚くしたい現役世代向け
- 安定最優先・定年退職期 … 元本のブレを極力抑えたい、退職前後のフェーズ向け
の3パターンに分けて、1478と1489の比率を考えていきたいと思います。
結論からお伝えすると、次のように整理しています。
| 投資目的 | 1478:1489 | コメント |
|---|---|---|
| 長期で資産形成/リスク管理重視 | 70%:30% | バランス良く効率的フロンティアに近い推奨比率 |
| インカム最大化 | 50%:50% | 高配当インカム追求のため同率配分で設計 |
| 安定最優先・定年退職期 | 85%:15% | ボラティリティ最小化と安定収益の両立 |
【長期で資産形成/リスク管理重視】1478:70% × 1489:30%
- 1478をポートフォリオの「軸」として7割確保
- 1489はインカムを少し押し上げるサテライトとして3割
この比率のイメージとしては、次のようになります。
- 長期目線で見ると、クオリティ要素を持つ1478の方が「土台」として安定
- 1489を3割入れることで、分配金利回りを底上げ、異なるセクター・ファクターが混ざることで分散効果
- 高配当ETFを「老後資金の柱」や「代用FXの担保候補」として長く持ちたい場合、1478:70% × 1489:30%をベースとして考えてよいバランス
1478:1489= 70:30ポートフォリオの上位構成銘柄(20社)
まとめポイント
- 1478比率が高い構成なので、商社・通信・自動車など大型バリューが上位に集中
- 両ETFに共通して入っている銘柄(本田技研、MS&AD、アステラス)がトップに来る構造
- 1489に強い銘柄(海運・鉄鋼など)は今回の7:3では20位以内に入らず
| 順位 | 銘柄コード | 銘柄名 | 合成構成比(7:3) | 1478のみ構成比 | 1489のみ構成比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 7267 | 本田技研工業 | 4.45% | 4.82% | 3.57% |
| 2 | 8725 | MS&AD | 4.00% | 4.64% | 2.52% |
| 3 | 9434 | ソフトバンク | 3.99% | 4.76% | 2.19% |
| 4 | 4503 | アステラス製薬 | 3.74% | 3.69% | 3.86% |
| 5 | 8031 | 三井物産 | 3.52% | 5.02% | 0.00% |
| 6 | 7751 | キヤノン | 3.49% | 4.08% | 2.10% |
| 7 | 9433 | KDDI | 3.45% | 4.93% | 0.00% |
| 8 | 9432 | 日本電信電話(NTT) | 3.34% | 4.77% | 0.00% |
| 9 | 8001 | 伊藤忠商事 | 3.33% | 4.76% | 0.00% |
| 10 | 6301 | 小松製作所 | 3.33% | 4.75% | 0.00% |
| 11 | 7203 | トヨタ自動車 | 3.29% | 4.69% | 0.00% |
| 12 | 8766 | 東京海上HD | 3.21% | 4.59% | 0.00% |
| 13 | 8750 | 第一生命HD | 3.07% | 4.38% | 0.00% |
| 14 | 6752 | パナソニック | 3.06% | 4.37% | 0.00% |
| 15 | 6902 | デンソー | 2.54% | 3.63% | 0.00% |
| 16 | 8015 | 豊田通商 | 2.42% | 3.46% | 0.00% |
| 17 | 1802 | 大林組 | 2.12% | 2.04% | 2.31% |
| 18 | 1925 | 大和ハウス工業 | 2.08% | 2.97% | 0.00% |
| 19 | 1928 | 積水ハウス | 2.06% | 2.10% | 1.96% |
| 20 | 2502 | アサヒグループHD | 1.97% | 2.81% | 0.00% |
【インカム最大化】1478:50% × 1489:50%
インカム(分配金)をできるだけ増やしたい場合は、50:50の均等配分という選択肢もあります。
- 1489の比率を高めることで、
- 銀行・海運・鉄鋼など高利回りセクターのウェイトが上昇
- 分配金利回りは70:30よりも高くなりやすい
- 一方で、
- 景気敏感セクターの割合も増えるため、株価の上下動・減配リスクは70:30より大きくなる
この比率のイメージとしては、次のようになります。
- 「ある程度の値動きは許容するので、インカムを厚くしたい」
- 「現役世代で、給与収入もあり、市場のボラティリティにも耐えられる」
1478:1489= 50:50ポートフォリオの上位構成銘柄(20社)
まとめポイント
- 5:5 にすると 1489側の銘柄(INPEX、JT、みずほFG、川崎汽船など)が上位に浮上
- 一方、商社・通信・電機など1478主体の銘柄は順位・比率が低下
- 景気敏感(バリュー)銘柄の存在感が強くなり、配当利回りは上昇する傾向
| 順位 | 銘柄コード | 銘柄名 | 合成構成比 5:5 | 1478のみ構成比 | 1489のみ構成比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 7267 | 本田技研工業 | 4.20% | 4.82% | 3.57% |
| 2 | 4503 | アステラス製薬 | 3.78% | 3.69% | 3.86% |
| 3 | 8725 | MS&AD | 3.58% | 4.64% | 2.52% |
| 4 | 9434 | ソフトバンク | 3.48% | 4.76% | 2.19% |
| 5 | 7751 | キヤノン | 3.09% | 4.08% | 2.10% |
| 6 | 8031 | 三井物産 | 2.51% | 5.02% | 0.00% |
| 7 | 9433 | KDDI | 2.47% | 4.93% | 0.00% |
| 8 | 9432 | 日本電信電話(NTT) | 2.38% | 4.77% | 0.00% |
| 9 | 8001 | 伊藤忠商事 | 2.38% | 4.76% | 0.00% |
| 10 | 6301 | 小松製作所 | 2.38% | 4.75% | 0.00% |
| 11 | 7203 | トヨタ自動車 | 2.35% | 4.69% | 0.00% |
| 12 | 8766 | 東京海上HD | 2.29% | 4.59% | 0.00% |
| 13 | 1605 | INPEX | 2.21% | 0.00% | 4.41% |
| 14 | 8750 | 第一生命HD | 2.19% | 4.38% | 0.00% |
| 15 | 6752 | パナソニック | 2.19% | 4.37% | 0.00% |
| 16 | 1802 | 大林組 | 2.17% | 2.04% | 2.31% |
| 17 | 1928 | 積水ハウス | 2.03% | 2.10% | 1.96% |
| 18 | 2914 | 日本たばこ産業(JT) | 2.02% | 0.00% | 4.05% |
| 19 | 6902 | デンソー | 1.81% | 3.63% | 0.00% |
| 20 | 8411 | みずほフィナンシャルグループ | 1.73% | 0.00% | 3.47% |
3-3. 安定最優先・定年退職期:1478:85% × 1489:15%
定年退職前後など、大きなドローダウンをとにかく避けたいフェーズでは、1478の比率をさらに高めます。
- 1478を85%まで引き上げることで
- クオリティフィルターの効いた防御型ポートフォリオが中心
- ボラティリティ(値動きの大きさ)を極力抑えやすい
- 1489は15%だけ組み入れ、
- 全体利回りを少し底上げ
- ただし集中リスクが大きくなりすぎない範囲に留める
この比率のイメージとしては、次のようになります。
- 「インカムも欲しいが、それ以上に元本のブレを抑えたい」
セクター構成の比較(70:30 / 50:50)
同じ1478と1489の組み合わせでも、どのセクターにどれだけ偏っているかによって、値動きの癖や景気局面ごとの強さ・弱さが変わってきます。セクター構成を確認しておくことで、「利回りは高いが特定業種に寄りすぎていないか」「防御力は十分か」といった点を客観的にチェックしやすくなります。
以下は、1478と1489を組み合わせたうち、ニーズがあると思われる2つの配分パターン(70:30/50:50)における、主なセクター構成の違いを比較した表です。(※構成比率は2025年12月時点の概算。相場状況・銘柄入れ替えにより変動あり。)
| 順位 | セクター | 7:3構成比 | 5:5構成比 | 差分(%) | コメント |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 銀行業 | 2.61% | 4.35% | +1.74 | 金融バリューの比率増 |
| 2 | 鉄鋼 | 2.12% | 3.54% | +1.41 | 景気敏感株が上昇 |
| 3 | 証券・先物 | 1.75% | 2.92% | +1.17 | 金融関連が強化 |
| 4 | 海運 | 2.98% | 3.92% | +0.94 | 高配当海運が存在感UP |
| 5 | 鉱業 | 1.32% | 2.21% | +0.88 | 資源関連へ寄る |
| 6 | 化学 | 2.26% | 3.12% | +0.85 | |
| 7 | 医薬品 | 4.76% | 5.47% | +0.71 | |
| … | … | ||||
| ▼ | 食料品 | 4.55% | 4.40% | -0.14 | 防御セクター比率低下 |
| ▼ | 不動産 | 0.61% | 0.44% | -0.17 | |
| ▼ | 保険業 | 10.28% | 8.06% | -2.22 | |
| ▼ | 情報・通信業 | 10.78% | 8.33% | -2.45 | 通信3社の比率が低下 |
| ▼ | 輸送用機器 | 16.16% | 14.32% | -1.84 | 自動車の存在感減少 |
| ▼ | 卸売業(商社) | 11.60% | 10.50% | -1.10 | 商社系比率低下 |
※ 一見すると50:50の方がセクター構成が均されて安定して見えるかもしれませんが、実際には銀行・海運・鉄鋼など景気敏感セクターの比率が大きくなるため、全体のボラティリティはむしろ増加します。
どの比率を選ぶかは、「ボラティリティへの許容度」と「分配金収入への期待値」のトレードオフになります。
5. まとめ:1478×1489をどう使い分けるか
最後に、本記事のポイントを簡潔に整理します。
- iSMSCI高配当[1478]は、クオリティフィルターを備えた「防御型の高配当ETF」。財務健全性や配当継続性を重視しており、長期の資産形成や老後資金の「土台」として使いやすい。
- NF日経高配当50[1489]は、高利回り銘柄に集中投資する「ピュア高配当ETF」。インカムを厚くする一方で、セクター偏りや景気敏感度の高さから、ボラティリティは1478よりも大きくなりやすい。
- 両者を組み合わせることで、
- 1478の防御力・成長力
- 1489のインカム強化
を同時に取りにいくことができ、リスクとリターンのバランスを投資目的に合わせて調整できる。
いずれも1478をコアとして厚めに持ちつつ、1489をサテライトとして上乗せする設計にしておけば、
- 「配当収入をもっと増やしたい」と感じれば1489を少し増やす
- 「値動きが気になってきた」と感じれば1489を減らし、1478比率を高める
といった形で、ライフステージや相場環境に合わせて比率を微調整することも可能ですね。
1478と1489のどちらか一方を選ぶというよりも、役割の違う2本をどう組み合わせるかを意識することで、高配当ETFを使った日本株ポートフォリオの「安定感」と「インカム」の両立を狙うのがおすすめです。
もちろん、高配当株ETFは1478と1489がベストな組み合わせだ!と言いたいわけではありませんので、一案として参考に留めていただければ幸いです。他の国内高配当株ETFについては、こちらで紹介していますので、合わせてご覧ください。
高配当ETFを長期で保有する場合、運用効率の観点から「代用FX」との併用を検討する余地があります。高配当ETFで安定的なキャッシュフローを得つつ、代用FXでスワップ収益を積み上げることで、配当+スワップの二重のインカム源を構築する戦略も視野に入ります。興味がある方は、代用FXの仕組みやメリット、リスク管理の完全ガイドの記事をご覧ください。


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