FX取引で利益を手にするためには、チャート分析や取引技術だけでなく、税金の仕組みを理解して資金を効率的に増やす視点 が重要になります。国内FXではその活用次第で“手残り額”が大きく変わります。
多くのトレーダーは、利益を増やすことばかりに意識が向きがちですが、実際に手元に残る「税引き後の利益」の計算をしながら運用戦略を考えていく必要があります。
本記事では、国内FXの税制度の基本と、実践で使える節税の考え方 を、初心者〜中級者向けに具体例とともに解説します。
※ 税制は改定される可能性があります。最終判断は国税庁の最新情報や税理士へ確認してください。
税金の仕組みを理解したうえで、「どうすれば資金効率を高められるのか?」 を知りたい方は、次の記事もあわせて参考にしてください。👇
代用FXは、税制そのものは国内FXと同じ枠組みを使いながら、資金の使い方を工夫することで効率を高める考え方です。本記事で税金の全体像を理解したあとに読むことで、より実践的な運用イメージが持てるようになります。
国内FXの税制度を徹底解説(税率・課税対象・税額計算)

国内FXの税金って、いくら稼いだらいくら取られるの?
国内FXならではの税率や税区分、どこまでが課税対象になるのかを整理します。(※海外FXは異なる内容のため、ご注意ください。)
まずは「自分の利益にどれくらい税金がかかるのか」をざっくりイメージできる状態を目指しましょう。
国内FXの税務区分と税率(申告分離課税20.315%)
国内FX(個人口座)の利益は、税務上「先物取引に係る雑所得等」に分類され、申告分離課税 が適用されます。税率は以下のとおり一律です。(給与収入などと違って累進課税ではありません。)
| 税種 | 税率 |
|---|---|
| 所得税 | 15% |
| 復興特別所得税 | 0.315% |
| 住民税 | 5% |
| 合計 | 20.315% |
- どれだけ利益が増えても税率が変わらない(累進課税ではない)
- 給与などの所得とは別枠で課税される
利益水準ごとの税額イメージ(国内FX)
| 年間利益(税引き前) | 税額(概算) | 税引き後の手取り |
|---|---|---|
| 30万円 | 約6万945円 | 約23万9,055円 |
| 50万円 | 約10万1,575円 | 約39万8,425円 |
| 100万円 | 約20万3,150円 | 約79万6,850円 |
| 300万円 | 約60万9,450円 | 約239万500円 |
- 同じ税率20.315%でも、利益水準が変わると手残りのインパクトが大きく感じます。
課税対象となるFX利益の範囲(決済損益・スワップ)
課税されるのは、その年に決済して確定した利益で、含み損益は対象となりません。
- 為替差益(決済損益)
- スワップの受取分
含み益・含み損は上記のとおり課税対象外なのですが、
決済損益がプラスの状態で、含み損を決済して確定させれば節税に利用できます。
FX利益にかかる税額シミュレーション
年間利益50万円の場合を考えてみると、
50万円 × 20.315% ≒ 10万1,575円
→ 手元に残るのは、50万円-10万1,575円=39万8,425円と計算できます。
税額を把握しておくと、資金計画が立てやすくなります。
損失繰越制度と損益通算(FX税制の最大メリット)



税金って利益が出たときは取っていくのに!利益がマイナスのときは何かしてくれないの!?
国内FXの大きなメリットが「損失繰越」と「損益通算」です。
この章では、損失をうまく活用して将来の税負担を減らす考え方と、具体的な数字のイメージを解説します。
FXの損失繰越制度とは(3年間の繰越控除)
FXでは、その年のトータルがマイナスで終わった場合、その損失を「なかったこと」にするのではなく、翌年以降最大3年間まで持ち越して、将来の利益とぶつけること(相殺すること)ができます。これが損失繰越制度です。
- 対象になるのは「先物取引に係る雑所得等」に分類される取引(国内FX、CFD、商品先物など)
- 繰り越せるのは「年間トータルでマイナスになった額」
- 翌年以降の同じ区分の利益とだけ相殺できる(株の譲渡益などとは別枠)
イメージとしては、「今年の赤字を、将来の黒字に充てる仕組み」です。きちんと確定申告しておけば、翌年以降に利益が出たときに、その分だけ税金を軽くできる“税金上の資産” として活用できます。
損失繰越を使った税負担比較の具体例
● 繰越申告をした場合
| 年度 | 損益 | 繰越後の課税所得 |
|---|---|---|
| 2023 | △100万円 | 繰越100万円へ |
| 2024 | +70万円 | 70−100=0円(損失30万円残) |
| 2025 | +80万円 | 80−30=50万円 |
→ 2024年の税額は0円、2025年は利益50万円分に課税
● 申告しなかった場合
- 2024年の+70万円に課税
- 2025年の+80万円に課税 → 税負担が大きく変わる!
損失繰越の確定申告で注意すべきポイント
損失繰越は自動的にされるわけではなく、確定申告が必要になります。自分は損失だから関係ないと思うのではなく、きちんと申告を行い、来年分の利益に備えるとともに、繰越中も毎年申告を継続するようにしましょう。
年末にできるFXの節税テクニック(損出し・決済タイミング・通算)
課税されるのは、その年に決済して確定した利益という点に着目すると、同じ利益でも、年末のポジション整理の仕方によって税額は変わります。この章では、損出しや決済タイミングの調整、他の先物取引との通算といった「年末に検討できる具体的な一手」をまとめます。
年末の「損出し」でFXの課税所得を減らす
(具体例)
- 年間利益:+50万円
- 年末時点含み損:△20万円
- 年内に損出し(ポジションを決済し、再度持ち直すなど)
「損出しをしない場合」と「損出しをする場合」を比較すると次のようになります。
| 項目 | 損出ししない場合 | 損出しする場合 |
|---|---|---|
| 確定利益 | 50万円 | 50万円 |
| 年内で確定させる損失 | 0円 | △20万円 |
| 課税所得 | 50万円 | 30万円 |
| 税額(20.315%) | 約10万1,575円 | 約6万945円 |
| 税引き後の手取り | 約39万8,425円 | 約43万9,055円 |
含み損をそのままにするのではなく、一度決済する(損失を確定させる)ことにより同じ年の「手残り」が変わる点がポイントです。
含み益の決済タイミング調整で税金をコントロールする
(具体例)
- 今年の利益:30万円
- 未決済含み益:20万円
- 住宅ローン控除等の税額控除10万円
- 年内に含み益を決済
- 翌年利益:+30万円
「含み益を決済する場合」と「含み益を決済しない場合」を比較すると次のようになります。
| 項目 | 含み益を決済しない場合 | 含み益を決済する場合 |
|---|---|---|
| 確定利益 | 30万円 | 50万円 |
| 税額(20.315%)【税額控除前】 | 約6万945円 | 約10万1,575円 |
| 税額【税額控除後】 | 0円(税額控除約3万円余り) | 1,575円(税額控除余りなし) |
| 来年の確定利益 | 50万円 | 30万円 |
| 来年の税額 | 約10万1,575円 | 約6万945円 |
| 今年+来年の税額 | 約10万1,575円 | 約62,520円 |
含み益を決済しない場合、決済する場合、ともに税額控除で税額はほぼ0円で変わりありません。しかし、含み益を決済しない場合は、含み益が残った状態から始まるため、利益を確定するとその分、来年の税額は大きくなります。
税額控除が余りそうな場合は、含み益ポジションを決済しておく方が、来年以降の税額を減らす効果があることが分かります。
CFD・先物との損益通算で税負担を抑える
ここでいう「損益通算」とは、同じ税区分に入る取引同士の利益と損失を合算して、最終的な課税所得を計算すること を指します。国内FXの場合、「先物取引に係る雑所得等」に分類される以下のような商品が対象になります。
- 国内FX
- 日経225やNYダウなどの株価指数CFD
- 金・原油などの商品先物 など
これらは「同じグループ」としてまとめて損益を計算できるため、どれか一つで出た損失を、他の商品の利益とぶつけて税負担を抑えることが可能です。
(具体例)
- FX:+50万円の利益
- 株価指数CFD:△30万円の損失
この場合、
50万円 − 30万円 = 20万円
が「先物取引に係る雑所得等」としての課税所得になります。
- 損益通算をしない場合:FXの+50万円に対してそのまま課税
- 損益通算をした場合:差し引き20万円に対して課税
同じ年の中で、どこかで出たマイナスを別の商品のプラスと相殺できる のが損益通算の大きなメリットです。
注意点
株式や投資信託など「申告分離課税の株・投資信託の損益」とは通算できません。あくまで「先物取引に係る雑所得等」のグループ内で完結する仕組みです。
税制を活かす年間トレード計画の立て方
税金は「年単位」で計算されるため、行き当たりばったりのトレードよりも年間を通した設計が重要です。この章では、税引き後の手取りを意識した目標設定や、利益が出た年・損失が出た年それぞれの考え方を簡単に整理しておきます。
- 税引き後の手取り目標からFX年間利益を逆算
- 年間・月間目標、1回のリスク量、取引縮小ルールへ落とし込む
- 利益が大きく出た年の税金・資金配分の考え方
- 損出しや決済繰延で税負担調整
- 利益の再配分(生活費、投資、証拠金)
- 損失が出た年の立て直しと損失繰越の活用
- 損失繰越を前提に落ち着いて再構築
- ロットを上げて取り返そうとしない
- FX取引と税金の記録・振り返りのコツ
- 年間損益の見える化
- 年1回の「自分の決算会議」
ここまでの内容を踏まえて、「税金は理解した。次は資金効率をもっと上げたい」という方は、株を担保にFXができる“代用FX” の全体像も押さえておくと、資金設計の選択肢が広がります。👇
ケーススタディで理解するFX税制の実践活用



実際の数字の動きや税額の違いを、もう少し具体的なパターンで見てみたいわ。
ここまでの内容を、実際のトレーダー像をイメージしたケーススタディに落とし込みます。数字の推移や税額の違いを見ることで、自分の状況に置き換えやすくなります。
ケース1:会社員トレーダーAさんのFX税金・損出し活用例
今年の確定利益が100万円になりそうな会社員トレーダー
| 項目 | 損出ししない場合 | 損出しをする場合 |
|---|---|---|
| 年間確定利益 | 100万円 | 100万円 |
| 年内で確定させる損失 | 0円 | △20万円 |
| 課税所得 | 100万円 | 80万円 |
| 税額(20.315%) | 約20万3,150円 | 約16万2,520円 |
| 税引き後の手取り | 約79万6,850円 | 約83万7,480円 |
含み損20万円をそのままにするか、一度確定させるかで、同じ100万円の利益でも手元資金に約4万円の差が生まれます。
この年の手残りの一部を翌年の証拠金に回し、残りを生活費や他の投資に充てる、といった資金配分を考えるのがポイントです。
ケース2:大きな損失から損失繰越で立て直すBさん
初年度にレバレッジをかけ過ぎて△150万円の大損失を出したトレーダー
| 年度 | その年の損益 | 年初の繰越損失 | 繰越控除後の課税所得 | 税額 | コメント |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | △150万円 | 0円 | 0円 | 0円 | 損失発生。必ず確定申告して損失を繰り越す。 |
| 2年目 | +80万円 | 150万円 | 0円(80−150=△70万円) | 0円 | 全額相殺され、損失70万円が翌年へ繰越。 |
| 3年目 | +120万円 | 70万円 | 50万円(120−70=50万円) | 約10万1,575円 | 黒字転換。ここで初めて税金が発生。 |
初年度の損失を申告していれば、2年目の80万円には課税されず、3年目の50万円分にだけ税金がかかる形になります。
大きな損失を出した翌年こそ、ロットを上げて「一気に取り返そう」とするのではなく、 繰越損失を前提に計画的なロット・資金管理で復帰していくのが現実的な戦略です。
まとめ|国内FXの税金を味方につけて資金効率を最大化
最後に、国内FXの税制における重要ポイントと、資金効率を高めるうえで押さえておきたい考え方をおさらいします。この記事で学んだ視点を、自分のトレードと資金設計にどう活かすかをイメージしてみてください。
- 国内FXは 税率一律20.315%の申告分離課税
- 損失繰越は最大3年、損出しと決済タイミング調整が実務的に強い
- 税引き後リターンを意識した計画が資金効率に直結
利益を増やす=税金への理解と資金設計の上に成り立つということを改めて意識して行動し、自分の運用戦略に取り入れていきましょう。


