※ 本記事は、筆者自身がポートフォリオに金投信(ETF)を組み入れて運用している実体験と、各種データを踏まえて構成しています。
「インデックス投資=株式と債券だけで十分」
こうした考え方は王道であり、長期投資の基本でもあります。
ただし、実際に長期で運用していると、
- 株式が同時に下落する局面
- 債券が思ったほどクッションにならない局面
- 為替や金融不安で資産全体が揺さぶられる局面
に直面することも少なくありません。
そこで検討したいのが金投信(ゴールドETF)を「インデックス投資の補助資産」として組み入れる選択です。
本記事では、
- なぜ金が分散に効くのか
- インデックス投資との相性
- 実際に組み入れる際の考え方(筆者の方針)
を整理します。
結論:金投信は「リターンを狙う資産」ではなく「ブレを抑える資産」
まず結論から。
金投信(ETF)は、
- 株式の代わりになる主役資産ではない
- しかし、ポートフォリオ全体の安定性を高める役割は明確にある
という位置付けです。
特に「株式100%が心理的にきつい」と感じる人ほど、金は有効な選択肢になります。
なぜ金はインデックス投資と相性が良いのか
① 株式・債券と値動きが被りにくい
金の最大の特徴は、株式や債券との相関が低いことです。
過去データでは、
- 金 × 国内株式:相関係数 ≈ +0.22(弱い正の相関/円ベース・月次リターン)
- 金 × 海外株式:相関係数 ≈ +0.20(弱い正の相関/円ベース・月次リターン)
- 金 × 国内債券:相関係数 ≈ −0.08(ほぼ無相関/円ベース・月次リターン)
という傾向が確認されています。
実際のETFデータを用いた分析でも、株式ETF(S&P500連動)、短期国債ETF、金ETFの月次リターン間の相関係数は、直近数年間においても弱い相関〜ほぼ無相関の水準にとどまることが示されています。これは、株式・債券・金を組み合わせることで、現在の市場環境でも分散効果が機能しやすいことを示す根拠のひとつです。
つまり、
株も債券も下がるときに、必ずしも同じ方向に動かない
これが分散効果の正体です。
インデックス投資では「長期で右肩上がり」を信じて積み上げますが、途中の下落局面をどう耐えるかも同じくらい重要です。
金はその“耐える力”を補ってくれます。
② 少量でもポートフォリオのブレが小さくなる
研究やシミュレーションでは、
- 金を2.5〜10%程度組み入れるだけで
- ポートフォリオ全体の年率ボラティリティが約0.5〜1.0ポイント低下
- シャープレシオが約10〜15%改善
といった結果が報告されています(World Gold Council などのポートフォリオ分析参照)。
ここで重要なのは、一般的(値上がり益を狙った短期売買を除き)に「金を大量に持つ必要はない。」という点です。
あくまで「補助」として機能させるイメージが現実的です。
📊 簡易比較:株式100% vs 株式+金5%
以下は、代表的なシミュレーション結果をもとにしたイメージ比較です。
| 項目 | 株式100% | 株式95%+金5% |
|---|---|---|
| 年率リターン | 高い(期待値は最大) | ほぼ同水準〜やや低下 |
| 年率ボラティリティ | 高い | やや低下 |
| 最大ドローダウン | 大きくなりやすい | 抑制されやすい |
| シャープレシオ | 基準 | 約10%前後改善 |
| 暴落時の心理負担 | 大きい | 軽減されやすい |
※ World Gold Council 等によるポートフォリオ分析を参考にした概念的比較です。将来の成果を保証するものではありません。
金はインフレ対策になるのか?【過度な期待はNG】
「金=インフレヘッジ」というイメージは根強いですが、実際には常に物価と連動するわけではありません。
- インフレ時に上がることもある
- 上がらない時期も普通にある
というのが実情です。
特に日本の場合、なぜ「金=インフレ対策」と単純に言えないのかを理解しておくことも重要です。
日本では、
- 長期間にわたって物価がほとんど上がらない(低インフレ・デフレ)が続いてきたため、金が「物価上昇にどれだけ連動するか」を検証できる局面そのものが少ない。
- 実際の金価格は、物価よりも円安の進行や世界的な金融不安(リスクオフ局面)への反応によって動くことが多く、投資の現場では「安全資産・不安時に選好されやすい資産」として認識されている。
という特徴があります。
この結果、日本では金は「インフレに備えるための資産」というよりも、
株式や通貨に対する不安が高まったときの価値の逃げ場(クッション)としての役割を果たしやすい資産。
そのため、「インフレが来たら必ず金が上がるから」という理由だけで、金をインフレ対策の専用資産として持つのは、目的を限定しすぎていると考える方が自然です。
金は、
- インフレ
- 金融不安
- 地政学リスク
といった複合的な不確実性が高まる局面で評価されやすい資産として捉えるのが、実態に近い理解と言えるでしょう。
筆者が金投信をポートフォリオに入れている理由
筆者自身も、
- 全世界株式インデックス
- 高配当日本株ETF
- 一部債券
に加えて、金投信(ETF)を少量組み入れています。(現状5%以下)
理由はシンプルで、
株価等の下落局面で、余計な判断をしなくて済むから。
株式100%だと、
- 暴落時に不安が増幅
- 余計な売買をしたくなる
という心理がどうしても働きます。
金を入れておくことで、
- 資産全体の下落が緩和され
- 気持ちのブレが減る
結果として、インデックス投資を継続しやすくなると感じています。
これは数字以上に大きなメリットです。
金投信(ETF)を使う際の注意点
最後に、実務的な注意点です。ここは箇条書きで簡単にまとめておきます。
- 配分は控えめでOK
- 目安:ポートフォリオの2〜10%前後
- 主役はあくまで株式インデックス
- 短期売買しない
- 金は配当も利息も生まない
- 値上がり益を狙うとブレやすい
- コストと税制を確認
- 信託報酬
- 特定口座・NISA対象か
ポートフォリオに組み入れる際には、事前にチェックしておきましょう。
まとめ|金投信は「インデックス投資を続けるための保険」
金投信(ETF)は、
- 爆発的なリターンを狙う資産ではない。
- しかし、インデックス投資を長く続けるための安定装置になる。
という立ち位置です。
株式インデックスを信じて積み上げるからこそ、心理面・値動き面のクッションとして金を少し入れておく。
金を入れるかどうかは、リターンよりも“続けやすさ”で考えるのがポイントで、これは「守り」ではなく、長期投資を成功させるための戦略的分散だと考えています。
ちなみに金ETFは「保有する」だけでなく、サービスによっては担保として活用し、現金を寝かせずに運用の幅を広げるといった使い方も可能です。ご興味ある方はこちらもご覧ください。


