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この記事は、すでに株式投資をしていて「保有株を担保にした代用FXも始めてみようか」と考えている方を主な対象にしています。
代用有価証券FX(代用FX)の仕組みと、そこに潜む複合リスク、安全運用のための証拠金設計について、詳細に、わかりやすく解説します。
結論から言うと、代用FXは「資金効率が良くてお得」というイメージが先行しますが、株価と為替の二重の値動きにさらされるハイリスクな手法であることを忘れてはいけません。この記事を読んで、代用FXと安全に付き合うための考え方をしっかり身に付けておきましょう。
少し長い記事になっていますので、先に結論を紹介しておきます。
簡単に次のような内容をお伝えしています。
代用FXとは、現金の代わりに保有している株式などを証拠金として差し入れて行うFX取引のことです。

なお、代用FXでは株式をそのままの時価で100%証拠金にしてくれるわけではなく、株式評価額の70%相当となっており、業者側が損失を被らないようにするための安全マージンが設定されています。(保有株の時価:100万円の場合、代用証拠金:70万円)

代用FXの最大のメリットは、株式を売却せずに、その評価額を担保として活用できるため、うまく運用できれば資金効率が高くなります。
一方で、この仕組みには大きなリスクが存在します。通常のFXでは「為替レート」だけを見ていればよかったところが、代用FXでは「為替レートの変動」「担保として差し入れている株価の変動」を気にする必要があるからですね。
これこそが、代用FXを通常のFXよりも難易度が高いと言われる本質です。
先ほど紹介してきたとおり、代用FXでは、
の影響を受けるというダブルリスクにさらされています。
つまり、これらのリスクに対応した
が同時に膨らんだときには、証拠金維持率が急激に悪化することになります。
例えば世界のマーケットでは、ざっくりと次のような動きがよく見られます。

例えば、代用FXにより、日本株を担保にして、ドル円や豪ドル円などの高金利通貨をロング(買い)した場合を考えてみましょう。これは、『日本株買い+円売り(外貨買い)』という、リスクオン前提のポジションになっています。
リーマンショックやコロナショック初期のようなときには、
が同時に起こりました。
このとき代用FX投資家は、
というダブルパンチを喰らってしまいます。
これが最悪なパターンで証拠金維持率が加速度的に崩壊していきます。

次から、株価の変動が証拠金維持率にどう影響するのか具体的な数値で見ていきましょう。
少し内容が難しくなってきますが、頑張ってついてきてくださいね。
FX取引のリスク管理でよく使われる指標が「証拠金維持率」です。
証拠金維持率 = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100%
※ 一般的なものであり、厳密には注文証拠金や出金予約額も加味する必要がある。
例えば、有効証拠金:10万円、必要証拠金:6万円、FXポジションの評価損益:0円の証拠金維持率は次のようになります。
10万円 ÷ 6万円 × 100% ≒ 167%
多くの国内FX会社では、証拠金維持率が 100%を下回るとロスカット(強制決済)発動というルールを採用しています。トレード手法にもよりますが、証拠金維持率は一般的には少なくとも300%はほしいところで、個人的には800%以上を目安にしています。
代用FXでは、証拠金維持率の悪化が通常のFXよりも急激に進むことがあります。
株価の下落 = 有効証拠金の目減りにつながるからです。
証拠金維持率の計算式を見ても分かるとおり、
「証拠金維持率 = 有効証拠金(現金 + 代用有価証券+FXポジションの評価損益) ÷ 必要証拠金 × 100%」
この式の有効証拠金(分子)は、「担保として差し入れている株価の変動(→代用有価証券)」「為替レートの変動(→FXポジションの評価損益)」という2つの要因で動くことが分かります。
通常のFXなら、為替レートが逆行して含み損が増えたときだけ、維持率が下がるという単純な構造です。
ところが代用FXでは、為替の損益がまだプラス〜トントンの状態だとしても、株価が下落すると、次のような流れで維持率が悪化します。
| 株式評価額 | 掛け目 | 代用証拠金評価額 (有効証拠金) | 有効証拠金の減少率 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円(基準) | 70% | 700万円(基準) | 0% |
| 950万円(-5%) | 70% | 665万円 | -5.0% |
| 800万円(-20%) | 70% | 560万円 | -20.0% |
具体的に「株価の下落」による証拠金維持率の変動について確認してみましょう。
代用FXの場合、まだ為替の含み損がそれほど大きくない段階でも、株価の下落だけで追証ラインに到達することがあり得ます。
そして、株価がさらに急落した場合には、有効証拠金は、株式の終値で毎営業日評価し直され、市場再開と同時に担保評価額が大きく減り、始値の時点で既にロスカットライン付近に張り付いているといった状態も起こり得ます。この場合、投資家側には対応する時間的余裕がほとんど残されていません。
例えば、次のような場合を見ていきます。
・株式評価額150万円→代用評価額105万円
・必要証拠金:30万円(ドル/円1lot=6万円の場合に5lot)
→証拠金維持率:105万円 ÷ 30万円 × 100% = 約350%
この状態で、FXポジションは含み損0と仮定します。
株価が下落して、株式評価額が減っていくと、維持率は次のように下がっていきます。
| 初期維持率 | 株価下落率 | 下落後の維持率 | 状態の目安 |
|---|---|---|---|
| 350% | 0% | 350% | 安全 |
| 350% | -10% | 315% | 注意 |
| 350% | -30% | 245% | 警戒 |
| 350% | -50% | 175% | 危険 |
| 350% | -70% | 105% | ロスカット間近 |
この表はFXの損益を含めず、あくまで「株価要因だけ」を見た場合の話です。
それでも、株価が30%下落するだけで、一見まだ安全に見えていた350%の維持率は警戒すべき水準にまで低下します。国内株式市場の個別銘柄で30%下落は決して珍しくありません。
ここからさらに為替が少し逆行して、FXポジションの含み損が膨らむようなことがあれば、一気にロスカット水準に転落する可能性もあり得ます。
次から「株価の下落」と「為替の損益の悪化」が同時に起こってしまう場合を具体的な数値で見ていきましょう。
具体的に次のような場合を考えていきます。
その後、市場にリスクオフの波が来て、次のようなことが同時に起こったとします。
すると、証拠金維持率は次のようになります。
Aさんから見ると「そこまで大きく動いていない」と感じる程度の株価下落と為替変動でも、証拠金維持率はジェットコースターのように悪化していきます。
代用FXでいう「安全運用」とは、もちろん一時的に証拠金維持率が100%を超えていることではありません。100%はあくまで「ここを割ったら即ロスカット」(一般的に)という最後の防波堤であり、目標にすべきラインではないからです。
代用FXで本当に目指すべき「安全運用」とは、
が発生しても、
だけのバッファ(余裕資金)を常に確保している状態を指します。
通常のFXを運用する場合のリスクレベルと証拠金維持率、対応する代用FXでの位置づけを一覧で示すと次のようになります。
| 通常のFXにおける運用 | 推奨証拠金維持率の目安 | 代用FXにおける位置づけ |
|---|---|---|
| 法定最低ライン(絶対に割ってはいけない) | 100% | ロスカット発動ライン |
| 通常のFXにおけるやや保守的水準 | 300%以上 | 単一のリスク(為替のみ)なら妥当な水準 |
| 通常のFXで目指したい安全水準 | 500%以上 | 株価と為替の同時下落にもある程度耐えられる |
| 通常のFXでは保守的な安全水準 | 800%以上 | 株価急落分をおおかた許容できる |
この考え方でいけば、代用FXは通常のFXと比べて、
許容レバレッジをかなり厳しめに設定する必要があります。
代用FXのメインはあくまで株式投資であり、FXはサブの扱いです。
FXで失敗して、代用している株式を売却せざるを得ない状況に陥ることを回避しなければなりません。
そのため、個人的には代用FXでの実質レバレッジの目安は最大でも3倍以下を推奨(証拠金維持率800%程度)しています。
ここでいう実質レバレッジとは、次のことを言います。
実質レバレッジ=FXの建玉総額 ÷ 代用証拠金(担保株の評価額×70%)
この倍率が高くなればなるほど、
という状態に近づいていきます。
なお、FXそのものの経験が浅い初心者の方であれば、通常のFX単体であっても、まずはレバレッジを2〜3倍程度に抑えるのが望ましい水準です。代用FXではここに担保株価の変動リスクも加わるため、特に初心者のうちは「レバレッジを上げない」ことを最優先に考えてください。
代用FXのリスク管理でもっとも重要なのは、先にワーストケースを決めておくことです。
例えば、次のようなシナリオを想定して、証拠金維持率、レバレッジがどの程度になるか確認するのがよいでしょう。
投資に絶対はありませんが、このような状況を想定した上で、証拠金維持率が自分の考える安全圏になるようにすれば万全です。
代用有価証券として差し入れる株式は、「流動性の高い大型銘柄」や「ETF(上場投資信託)」を基本にするのが鉄則です。
「出来高が少ないマイナー銘柄」や「時価総額の小さい小型株」などを担保にしていると、株価急落による有効証拠金の急減、証拠金維持率の急低下という展開が容易に想像できます。
FXのポジションで損益が悪化し、損切りもできず、維持率が低下してきたときに考えてしまうのが「保有(担保)株をここで売って、現金証拠金に振り替えるべきか」という問題です。
担保株式の有効証拠金は70%ですが、売却して現金にすることで現金100%となり、証拠金維持率が多少回復するからですね。
結論から言ってしまえば、それはもう代用FXでの運用が破綻していると言えます。
代用FXのメイン運用は株式投資だからです。
これを避ける最善の方法は、FX側のルールを明確にしておくことです。
「ギリギリまで粘ってから対応する」のではなく、「維持率が○%を割ったら、機械的に○万円入金する。」「FXポジションの損切りラインはココ」ということをルール化し、必ず実行しなければなりません。
これは代用FX特有の問題ではなく、一般的に、FXの一番難しい点と言えます。
代用FXを退場することなく続けていくためには、定期的なストレステストは必須です。
下記はその一例です。
| ストレステストの流れ | 具体的内容 |
|---|---|
| 想定シナリオ | ・担保株が2〜3日連続でストップ安級の下落(合計で-30〜40%) ・同時に、ドル円などが3〜5%程度、自分のポジションと逆方向に急変 |
| 想定シナリオ結果 | ・証拠金維持率はロスカットライン100%を割り込まないか ・割り込みそうな場合、どのタイミングでいくら追加入金が必要になるか ・その資金をすぐに用意できる現金・預金はあるか |
| 想定シナリオ結果への対策 | ・ポジションサイズを小さくしてレバレッジを落とす ・担保株をより安定した銘柄に入れ替える |
あなたも、現在のポジションで株価下落○%、為替○円逆行など自分の想定するシナリオにおいて、どのような結果になり、その場合どのように対応するか、事前に対策を考えておきましょう。
最後に、本記事の内容を整理しておきます。
代用FXは、管理を誤ると株とFXの両方で大きなダメージを負う可能性があります。
しかし、その一方で、うまく付き合っていけば資金効率を非常に高められる可能性を秘めていることもまた事実です。
「資金効率が良さそう!」という理由だけで飛びつくのではなく、今回紹介したようなリスク構造と管理ポイントをしっかり理解した上で、上手に活用していきましょう。

投資歴は10年以上。現在はインデックス投資・高配当株ETFを中心とし、これら保有株を担保に使う「代用FX」で資金効率を高める投資を自ら実践。初心者の方にも分かりやすく、仕組みとリスクを丁寧に解説していきます。
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